頭頸部 ( とうけいぶ ) がん診療
頭頸部外科 ( とうけいぶげか ) とは?
「 頭頸部 」とは、くびから上の部分をまとめて表した呼び名です。顔面や口のなか、鼻のなか、のど( 咽頭、喉頭 )、首のリンパ腺、甲状腺や唾液腺を含みます。これらの病気では手術治療が中心になるため、その担当分野が「 頭頸部外科 」と呼ばれています。頭頸部のうちでも脳は脳神経外科が、眼球は眼科が、歯は歯科、頚椎や筋肉は整形外科、皮膚は皮膚科が担当しますので、頭頸部外科は実際には脳、眼球、歯、頚椎、皮膚の病気を除いた頭頸部の良性・悪性腫瘍( がん・肉腫 )、外傷、奇形などに対する手術を行っています。
http://swww.jibika.or.jp/owned/toukeibu/ 頭頸部外科情報サイトより引用
頭頸部がんとは?
頭頸部外科で最も重要なものは頭頸部がんの診療です。頭頸部にできるがんには、舌がんを含む口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、上顎洞がんなどの鼻・副鼻腔がん、唾液腺がん、甲状腺がん、耳・側頭骨がんや頸部リンパ節転移などがあります。
これらのがんができる場所は、食べる、声を出す、息をするなど、生活の質( QOL )に関わる場所が多く、早期発見、早期治療がとても大切です。
どんなひとがかかりやすいの?
咽頭がん、喉頭がん、口腔がんはタバコとお酒がリスクとなりやすく、これらの量が多い方は要注意です。
口腔がんはくちのなかの衛生状態や、くりかえす口内炎( 入れ歯があっていない場合やとがった歯が舌に当たっている場合など )が、上咽頭がんはEBウイルス、中咽頭がんはヒトパピローマウイルスがリスクとなる場合があるため、タバコやお酒と関係なく若い方や女性にも発病することがあるので注意が必要です。
甲状腺がんや唾液腺がんは、子供や若い方でも発病することがあります。しこり以外には何の症状もなく、数年かけてゆっくり進行するがんもあるので注意が必要です。
甲状腺がんは自覚症状が全くなくても、他の病気を診断する目的で行ったエコーやCT検査の結果偶然指摘される場合も多くあります。
外耳道がんは耳掃除のしすぎで外耳炎を繰り返している方に起こりやすいことが分かっています。
がんによっておこる症状
外耳道がん・・耳掃除のくせがある・外耳炎がなおらない・痛みが強い
鼻副鼻腔がん・・鼻づまり・鼻出血・頬の腫れ
口腔がん・・口内炎がなおらない・痛みをともなうしこりがある・のみこみにくさ
咽頭がん・・鼻づまり・聞こえにくさ・鼻出血・痰に血が混じる・いびき・飲み込みにくさ・声がれ・息苦しさ
喉頭がん・・声がれ・息苦しさ・痰に血が混じる
甲状腺がん・・しこり・声がれ・むせやすくなった
唾液腺がん・・耳の下、あごの下のしこりや痛み・顔の動かしにくさ
これらのがんは、首のリンパ腺に転移をおこすことがあるため、首のリンパのしこり( 痛みを伴わないことも多い )が病気発見の手がかりとなることも多くあります。
当院における頭頸部診療
勤務医時代には頭頸部がん患者さんの治療に多く携わってきました。頭頸部がんの根治治療( なおすための治療 )は主に手術で切除するか、放射線治療( ±抗がん剤 )を行うかのどちらかになります。発見時に病気が進行していると、切除しなければならない部分が多くなったり、放射線治療範囲が広がったり、化学療法を併用したりする必要があるため、治療後の生活の質がぐっと下がります。また病気の広がりによっては、根治治療( なおすための治療 )そのものがむずかしくなることもあります。逆に早期に見つかったものほど、治療も行いやすく治療後の生活の質を保てる可能性も高くなります。
世の中でがん検診は普及しつつありますが、頭頸部がんは発症数がそれほど多くないため、頭頸部がんや頭頸部がん検診という言葉はほとんど聞くことはありません。その他の臓器に比べて早期発見につなげる機会は、まだまだ低いと考えます。
当院では、問診、視診、触診に加えて、内視鏡検査、超音波検査、頭頸部単純CT検査、採血検査、組織生検および細胞診をおこなっております。
当院で治療を行うことはできませんが、病気を疑う目をもって診療し、早期発見につとめ、少しでも早く治療可能な病院に紹介することで、皆様のお役に立ちたいと考えております。